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入門編

プロの情報武装を超える優位性

 機関投資家やヘッジファンドといったプロの投資家および投機筋は、徹底的に情報武装しているため、一般のトレーダーに比べると圧倒的な優位性を持っています。
 
 十分な情報を持たないトレーダーは、あれこれ売買してもプロの仕掛けに翻弄されることが多く、結果として損失、さらには退場へと追いやられることになりがちです。実際、トレーダーの9割以上はそのような悲しい結果に終わっています。しかも、一流と呼ばれる投資家でさえ、過去には大損失を経験し、そこから這い上がってきた者がほとんどなのです!
 
 それでは、マーケットで資産を殖やすことは不可能であるのかというと、十分に可能性はあります。そしてそれを確実なものにするのが、真のシステムトレード、アルゴリズム取引というものです。
 
 読者の中には、裁量で勝ち続けているからシステムやアルゴリズムは関係ない、と思っている方がおられるかもしれません。けれども、裁量によるトレードにはまったく予想できない「まさか」の出来事が入る隙があり、そこへ人間が無意識に犯す「ヒューマンエラー」が信じられないほどの不運なタイミングで生じてしまうのが現実なのです。相場経験の長い方なら、このことは理解していただけることと思います。著名なマーケットの魔術師ですら、大損失を経験しているのですから、納得していただけない方は、単にそのような経験をしていないだけのことなのです。
 
 本稿では、投資家にとって極めて重要で、かつ必須となるシステムトレード、アルゴリズム取引の重要な点について解説していきます。
 

そもそも良いトレードとは何か?

 システムやアルゴリズムについて考える前に、そもそも良いトレードとはいったいどんなトレードなのか?という点について考え、頭の中を整理しておきましょう。
 
 良いトレードとは、事前に決めた戦略やルールにしたがって行動した結果、利益が得られたトレードです。逆に、戦略やルールを無視してとった行動によって損失を出したり、利益を逃したトレードは、悪いトレードということになります。ここで重要なのは、信頼のおける戦略やルールに従ったのであれば、損切りになってもそれは悪いトレードとは必ずしも言えないということです。
 
 ここで戦略やルールに従うことの重要性を指摘しましたが、実際のトレードではそれを達成するのが誰にとっても容易であるとは限りません。したがって、トレード技術の中には、戦略やルール通りに注文を執行できる能力が含まれます。システムやアルゴリズムによる自動売買では、システムダウンなどのトラブルがない限り、この点は問題ありません。
 
 戦略やルールそのものに目を向けると、そこには売買ポイントの決定や資金配分などがあります。特に、資金配分における各売買数量の決定は、リスク報酬比率を左右するため、非常に重要な部分です。また、投資可能な対象が多すぎる場合には、その中からより優位性のある対象を選別するスクリーニングの技術が重要になります。
 
 そして、投資ルールの中で最も重要視されるのが、損切りです。一度設定した損切りの注文は、現在価格に近づけることはあっても、遠ざけることをしてはいけません。また、リスクの大きさを現在価格から損切りの価格までの固定された一定の幅であるとすると、安く買っても高く買ってもリスクに違いは生じない、という観点も重要です。

 さて、良いトレードをもたらす戦略やルールを考える上で、重要なことがあります。それは、トレードにおける悲しい現実として、人間の当たり前の感覚がトレードには不利に働いてしまうということです。
 
 より具体的に言えば、人間の目から見て最高に感じる売買ポイントや売買数量といったものが、最悪の売買をもたらす場合があるということです。特に、オーバートレードと呼ばれる売買数量の拡大は、たいてい大損失のような悲惨な結果をもたらします。
 
 この理由は、単に人間がトレーディングにおいて欲や恐怖の感情に支配されてしまうためだということではなく、人間の目視による判断が、必ずしもマーケットにおいて正しいとは限らない、ということなのです。
 
 面白いことに、世の中に数多くある必勝法の類を、コンピュータを使って解析してみると、まったく役に立たないことが判明する、といった例に枚挙の暇がありません。
 
 結局、市場平均をアウトパフォームできる投資法というのはそれほど多くはなく、一般人の安易な判断だけで運用成績を上げることは至難の業なのです。
 
 システムトレードやアルゴリズム取引を用いる強みは、それが信頼できるものであれば、売買ポイントや売買数量等が完全にプログラム化されており、自動で機械的に執行されるため、個人投資家であっても一貫した優位性が得られるという点にあります。また、システムやアルゴリズムが様々な投資対象へのスケーラビリティを有するのであれば、投資機会を多く確保でき、資金増加の効率を向上させることが可能になります。

 ただし、システムトレードやアルゴリズム取引は、正しい理解のもと使用しないと、うまくいかない場合があります。
 
 例えば、注文を自動で執行するためのファシリティがないのであれば、手動で行うしかなく、マーケットに張り付かざるを得ず、まったく休めないということになります。しかも、連敗した場合には、システムやアルゴリズムに疑念が沸き、トレーディングに対する正しい評価ができなくなります。そしてついには、売買指示に従うのが困難になるのです
 
 また、所与のシステムやアルゴリズムが好成績を示していても、
 
単に過去のある一定期間において最高の収益が得られていただけ
 
市場の変化に対応できない
 
といった場合にはまったく使い物になりません。
 
 以上のことを踏まえた上で、読者の投資スタイルに合ったシステムやアルゴリズムがどのようなものかについて考えてみましょう。

 まず、扱うトレードの時間枠の違いに着目します。もし読者が短期トレーダーであれば、多くのトレード数が確保できるため、システムのバックテストにより得られる統計値を活用し、統計的優位性のあるトレード法を探すことができます。ここで、統計的優位性とは、バックテストの結果の損益がマイナスにならないことを意味します。
 
 例えば、一取引当たりの平均損益(テスト期間における総損益÷取引回数)を計算し、取引手数料やスリッページ(注文を出した価格と、実際に約定した価格との乖離)等の取引コストを差し引いても十分な利益が得られるのであれば、損益がマイナスとなる売買と比較して、将来的にもより良い成績を残す可能性があるということになります。
 
※このような性能評価指標のより有益な内容については、後述の勝率と損益率の関係を参照してください。
 
 ただし、バックテストで優れた結果が出たからと言って、今後もそれが再現されるということを期待することはできません。したがって、バックテスト結果は単なる参考値にすぎないものと見なすべきです。しかしながら、テストには本来の利用法があり、「テストと検証は別物」を参照していただきたいと思います。
 
 さて、短期トレードには、統計的優位性が得られる他、すぐに利益が獲得できることや、明確なリスクのもと安心してトレードができるといった強みがあります。しかしながら、長期投資家から見ると、短期トレードでは損切りを含めたトレーディングコストがあまりにも大きく積み重なりすぎて、現実には利益を積み重ねるどころではない、といった指摘があります。実際、マーケットに張り付いて激しい値動きに振り回され、結局、貴重な時間と資金の両方を失ってしまう人が後を経ちません。

 そうは言っても、長期投資を志すのであれば、相当大きなドローダウンを覚悟しなければならず、また投資判断が間違っていたと気づいた時には手遅れだったということにもなりかねません。そういう意味では、トレーディングとマーケットとの間に何らかの不一致が見つかれば、即座にトレードを修正し、再度仕掛けなおすのが賢明であると言えます。
 
 次に、流動性に着目すると、ある程度十分な流動性がない場合には、任意のタイミングで売買注文が成立しない、すなわち、買いたい時に買えず、売りたい時に売れないといったことになるため、システムやアルゴリズムの持つ優位性が発揮できないことになります。したがって、流動性に問題のある市場には手を出さないことが賢明です。
 
 流動性よりも遥かに注目されているのが、ボラティリティです。なぜなら、ボラティリティが高いと大きな利幅が取れる可能性があるからです。このことから、一般にボラティリティが高ければ高いほど良いように思われがちですが、ボラティリティが高いということは、当然リスクも大きいということになります。ゆえに、運用するシステムやアルゴリズムの性質によって、適したボラティリティは異なるということになります。
 
 したがって、ボラティリティが運用中のシステムやアルゴリズムに適さなくなった場合、そのようなシステムやアルゴリズムは停止し、現在のボラティリティにより適したものへと切り替える必要があります。このことは、裁量トレードにおいて、マーケットの状況に合わせてトレーダー自身が変化し、適応しなければならないことと同様です。ゆえに、システムやアルゴリズムは、マーケットに対してタイムリに適応できるものでなければならないのです。

 ボラティリティの変動によるリスクの拡大を抑える方法として、分散投資が注目されています。投資を分散する際に、2つの強い正の相関を持った投資対象を買った場合、一方の価格が買値よりも下がると、もう一方も同様に下がる傾向があるため、結果としてリスクが分散されていないことになります。そこで、一般には相関性の低いもの同士を投資対象に選ぶことで分散が行われるのですが、それが必ずしもうまくいくとは限らないのです。
 
 なぜなら、相関というのは単に、「過去においてどれだけ似ていたか」を示しているにすぎないため、未来においては相関性が変ってしまう可能性が十分にあるのです。その未来というのは、遠い先かもしれませんが、明日かもしれませんし、1時間後、あるいは1分後なのかもしれません。我々は、過去をトレードするのではなく、現在仕掛けて、未来に利益を得ることを期待するのです。ゆえに、相関性を利用した分散投資は必ずしも安全ではない、ということになります。
 
 最後に、プロがよく好む鞘取りについて考えてみましょう。鞘取りは、割高な投資対象を売って、割安な投資対象を買うという手法で、両者が本来の価格に戻る確率を考えれば、一見安全そうに見えます。
 
 ところが実際には、買いと売りの両者でリスクをとっていることとなり、割高なものがさらに上昇し、割安なものがどこまでも下落する、という股裂き状態になることは珍しいことではありません。これは、本来の価格というものが、単なる思い込みにすぎないことを示唆しています。鞘取りは、ヘッジファンドが破綻する要因としてもよく取りあげられますが、本来の価格という安易な思惑による売買はあまりおすすめできません。
 

損小利大

 トレードは、やり続ける限りにおいて全勝はありえません。 勝ちと負けの両方を経験する中、勝ちによる利益が、負けによる損失とコスト(手数料、スプレッド、スリッページ等)との和より大きければ、資産が増加するということになります。
 
 それでは勝率が高ければ良いかと言えば、たった一回の大損失で市場から退場することもあり得るため、勝率への偏重は良くないということになります。
 
 もちろん、勝率が高いのは良いことですが、一連のトレードの結果、資産が増えているかどうかが最も重要なのです。
 
 資産が増加するために必要なことは、損を小さくし、利益を大きくする、ということ以外にありえません。これを一般に、損小利大と言います。

損小利大を客観的に測る指標の一つに、次式で与えられる損益率があります。
 
 損益率=(勝ちトレードの平均利益)÷(負けトレードの平均損失)
 
この値が大きければ大きいほど、損小利大が達成されていることとなります。例えば、
 
 1回目のトレードで5,000円の利益
 2回目のトレードで3,000円の損失
 3回目のトレードで8,000円の利益
 4回目のトレードで2,000円の損失
 5回目のトレードで1,000円の損失
 6回目のトレードで2,000円の損失
 7回目のトレードで5,000円の利益
 
といった場合、トータルで10,000円の利益となり、
 勝ちトレードの平均利益=(5,000円+8,000円+5,000円)÷3=6,000円
 負けトレードの平均損失=(3,000円+2,000円+1,000円+2,000円)÷4=2,000円
 損益率=6,000円÷2,000円=3
が得られます。一般には、損益率=3を維持するのは難しいと言われています。
 読者の方も一度、ご自身のトレードで確かめてみてください。
ちなみに、勝率=3÷7×100≒43%となります。
 このことから、勝率が50%に達していなくても、損益率が3を達成しているため、資産は増加するということになります。資産運用の鍵が損益率にあるということがお分かりいただけましたでしょうか。

 トレーディングコスト(手数料、スプレッド、スリッページ等)を無視した場合、 以下の勝率と損益率のペアにおいては、トータルの損益はゼロとなります。
 
 勝率=10%のとき、 損益率=9
 勝率=20%のとき、 損益率=4
 勝率=30%のとき、 損益率=約2.33
 勝率=約33%のとき、損益率=2
 勝率=40%のとき、 損益率=1.5
 勝率=50%のとき、 損益率=1
 勝率=60%のとき、 損益率=約0.67
 勝率=約67%のとき、損益率=0.5
 勝率=70%のとき、 損益率=約0.43
 勝率=80%のとき、 損益率=約0.25
 勝率=90%のとき、 損益率=約0.11
 
例えば、勝率が50%のときは、損益率=1を基準に考えることで、
 
 平均利益額−平均損失額>トレーディングコスト
 
であれば、資産が増加することが分かります。読者のトレード法が、資産の増加、すなわち、損小利大に寄与するかどうかという問題については、上記の勝率と損益率の関係を参照しながら、トレード法の修正等を行っていただきたいと思います。
 

マネーマネジメント

 マネーマネジメントにおいて重要な事柄は、建玉数の決定です。
なぜなら、建玉数によってレバレッジが決まり、レバレッジによってどの程度お金持ちになれるかが決まるのです。建玉数を求めるためには、まず建玉単位数を求めます。
 
建玉単位数は、次式で与えられます。
 
 建玉単位数=口座資金×リスク率 r÷1建玉単位に対する最大損失額(最大損切幅)
 
例として、口座資金を100万円とします。
 
リスク率 r は、口座資金をリスクに晒す割合(%)を示すもので、1〜2%程度が無難であると言えます。ここでは、r=1%とします。
 
1建玉単位に対する最大損失額(最大損切幅)を、1万円とします。
 
よって、
 
 建玉単位数=100万円×0.01÷1万円=1
 
となります。ここで、単位建玉を1万ドルとすると、
 
 建玉数=建玉単位数×単位建玉=1×1万ドル=1万ドル
 
となります。 入門編 バックテスト例 テストと検証は別物 ノウハウ・アイデア集 上級編ガイド